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Photo:Hiroki Sato
2007年2月
February 26,2007 12:01 PM

アントニオ・ガデス「血の婚礼」

ついに私の人生を変えた舞台との因縁の初対面!
ガデスとこの作品との出会いについてパセオさんのホームぺージ「アントニオ・ガデスの想い出」に書いてありますのでお暇なときにどーぞ。

すべての原点。
初演が1974年。30年以上も前の作品。すべてのアーティストが直接または間接的に影響を受けている。
民族芸能を劇場にのせるひとつの規範。いまだ唯一。

私も夢中で彼の背中を追い、そこから離れ、ようやく自分の表現をつくり出しているように思える今でも、どこかで対ガデスということを潜在的に意識して仕事をしていたことに改めて気づかされた。自分の中に有形無形に存在する甚大な影響。

シンプル。透明。スペイン文化の精髄。大吟醸酒のような精白しつくされた味わい。観るほうの感性が問われる作品でもある。
平凡な日常の中に潜む光と影。孤独。愛憎。血のにおい。狂気。

映画やドラマでも難病や死別といったテーマを安易に描く作品が多い時代。こうした非常にシンプルで繊細な作品はどう受け止められるのだろうか?観終わって号泣するような、または立ち上がって拍手喝采を送るようなものでもないし。
第三者的な視点で観て感動するような作品ではなく、心の裡にひっそりと静かに語りかけてくるような、「静謐な感動」。

今回はあまりに思い入れが強すぎて冷静に観れなかったと思う。舞台後方にたった一枚下げられている舞台美術。それを見ただけでもう息ができなくなってしまった。雑多なことに追われている日々から少し休憩して、詩集や俳句を味わうようにゆったりとした気持ちでもう一度みたい。

February 25,2007 01:10 AM

アントニオ・ガデス「CARMEN」

昨日復活したアントニオ・ガデス舞踊団の「カルメン」を観にいった。10年ぶりの来日。
ガデスをはじめ往年の舞踊団を支えてきた重鎮たちがいなく、どうなることやらと思っていたけれど・・・。

ガデスの舞台はいつも渋~い脇役人にがっちり支えられて成り立っている舞台であった。いつもガデスの配役、人選は最高だった。大河ドラマの最高傑作「黄金の日々」みたいに、主役が松本幸四郎、脇を緒方拳、高橋幸治、鶴田浩二、宇野重吉らが固め、主役中心の物語ではなく、さまざまな人間悲喜劇を交錯させながら描き出す、まさにザ・大河ドラマのような重厚さがあった。

でももう私の大好きな歌い手ゴメス・デ・ヘレスのうめきもマノロ・セビージャの叫びも無い。ハゲの男性舞踊手たちもマエストロ、ファン・アルバも渋いおばさんバイラオーラもいない。(そんなこと言ったら私が見た当時だってすでにクリスティーナ・オジョスもファン・アントニオもエンリケ・オルテガもいなかった。)

しかし!それをすべて差し引いても最高に素晴らしかった。10回ぐらい泣いた。
むかしの舞台の面影を追って落涙することも確かにあったが・・・。
筆舌に尽くし難いガデスの振付、演出。スペインのSol y Sombra(光と影)を照射する照明。ミュージシャン、団員一人ひとりの入魂の演技。ステラ・アラウソのずばりカルメン。そしてアドリアン・ガリアのガデスのスタイルを完璧に踏襲した偉大な仕事に圧倒された。

偉大な芸術は作者や演者の意図を超えて観客にさまざまな感動、現象を巻き起こす。人生を変えてしまったり、前世の記憶が蘇ってしまったりとか!?
完璧過ぎる舞台に見えて、そんなマジックをも巻き起こす「余白」を残して創造したガデスの神通力に驚愕です。

これから待望の「血の婚礼」と「フラメンコ組曲」を観にいきます!

February 21,2007 07:33 PM

福井公演取材

今日は7月15日福井県福井市のフェニックス・プラザで公演するフラメンコ「曽根崎心中」のための取材でした。

福井放送の方々や主催者関係者でスタジオが一杯。いつもとは違う雰囲気に緊張。インタビューでは一言コメントで作品の魅力などについて聞かれる。もともと喋りがうまくない私は緊張でうまく話せない。こういうときいつもそうだけど・・・。バチッと照明が当てられ舞い上がり、カメラからミサイルが飛び出して来やしないかとドキドキ。言いたいことが一杯ありすぎて空回りしてしまい、挙句の果てに思ってもみないトンチンカンなことを口走ってしまう。

その点、さすがの阿木さん、宇崎さん。短く簡潔にわかりやすくお話されて、いつも羨望のまなざしで見つめる私。これからはきちんと言葉でも伝えられるように鍛錬せねば!それには普段から「あそこにある、あれとって」なんて言ってないできちんと話すようにしよう。

撮影風景(手前がお初、左後ろの方に阿木さん、宇崎さん、私)
2007_02210088.JPG

撮影用に少し踊りました。この作品は不思議な力があって、何度踊っていてもすぐ感情移入できるし、飽きることなく新鮮に踊れます。お初と徳平衛が見守ってくれているのかな?今年は堺市、熊本県八千代座、福井県、水戸公演があります。いい作品、最高のスタッフ、舞踊団に出会えて本当に幸せです。目標は全国制覇。頑張ります!!

February 3,2007 12:34 AM

セルニータ・デ・ヘレス「カンタ ヘレス」つづき

「カンタ ヘレス」5曲目収録のセルニータ・デ・ヘレスの歌う「カバーレス」。私が数多ある名唱の中で3本の指に数えるひとつ。

セルニータの愛息クーロ・デ・ヘレス(ギターリスト)と何度も仕事をさせてもらっていますが、その彼とアントニオ・マレーナとの会食(大食い大会)でのひとこま。
彼らの行きつけの店、東北沢の「バル・エンリケ」。彼らはここでフラメンコを聴きながらおいしいスペイン料理を食べるのが最高の楽しみ。そして一番盛り上がるのが「カンタ ヘレス」。ソルデーラ、テレモートと聴き進み5曲目に入った瞬間、どんなにおいしい料理を食べているときでもこのときばかりは箸(フォーク?)を置き聴き入ります。

「ア、アーイ」と始まったとたん皆の口腔からしょっぱい唾が出始め、あとはもう曲が進むにつれ涙は増すばかり。クーロは亡父の熱唱に感極まり、アントニオは同じ歌い手としてすっかりあの声に恋している様子。最後は失恋して泣きはらしたような顔になって「オレエ~ン、オレエ~ン」。再度の乾杯!フラメンコ万歳!!

もうひとつの儀式みたいになっていて、ここに食べに来るたびにこれをやるもんだから、アントニオの息子アントニート(ギターリスト)は「アホ親父たちったら毎回同じ曲で同じところで感動し、コメントまで寸分たがわず一緒でもう飽き飽きだぜ!」とあきれ顔。
でも毎回そうなってしまうぐらいに本当にこのセルニータの歌は素晴らしい。
なんといってもこの節回し。私は何度かこの曲を歌いたくてトライしてみましたがいつも途中で断念。だって満天の星空を数えるようなものなんだもの!

セルニータは若くして(享年50歳)亡くなったために録音が非常に少なく、しかも存命時はその声があまりに艶やかなため、生粋のヒターノなのに「ヒターノじゃない」などと言われていました。でも現在では大変敬愛され、「彼が長生きしていればマイレーナ(カンテの王様)はなかった」と例えられるほど。そのどれもが名唱と呼べるもので、歌知りでした。

そしてこの曲をさらに名曲たらしめているのが古兵パコ・アンテケーラ(1938-2000)。往年のフラメンコ・ファンには忘れられないアーティストでしょう。彼の絶妙な伴奏はこの曲をさらに香り高きものにしています。
ドカッドカッドカッ、ジャッジャッジャッ、ピョ~ン。
つんのめりながら川原を歩き、危ない!転ぶ!!川に落ちる!!!ってところで鷲さんが飛んできて助けてくれたような弾きっぷり。妙味。

あのヘレスの大番長テレモートも心の底からハレオをかけています。セルニータのボディーブローに思わずやられて、「ウホッ、オレー!」と。あのイケズなテレモートが!

フラメンコ最重要曲「シギリージャ」を明るい曲調に変えて歌う「カバーレス」。
絶望の淵にあり、何の解決も見出せないまま諦めにも似た境地でこのまま生きていこうと、晴れ晴れとしているような人生の極意を歌っています。(個人的解釈)

セルニータ・デ・ヘレス(1921-1971)
sernita.bmp

February 1,2007 10:44 PM

カンタ ヘレス

「カンタ ヘレス」・・・。この名前を聞いただけで思わず「オレー!」で、アドレナリンがピューッ!なCD。これを聞いて心が動かない人はフラメンコ人間にあらず。名盤中の名盤。

「Canta Jerez」
01221.jpg

数年前、小島章司御大の公演で来日していたアルティスタとのホテルの一室での話。
ミゲル・ポベーダほか若い歌い手たちが現代フラメンコの雄、カマロン、エンリケ・モレンテらを例に挙げながら、モデルノな音使いで絶妙にコンパスを泳ぐ唱方について熱いカンテ談議に花を咲かせていました。
そのときズーッと押し黙って(話に乗り遅れて)いた中年アントニオ・マレーナがゴソゴソとカバンの中から古いテープを探し出し、「まあちょっとここらでオラが村のボリーコ翁のソレアを聴いてくれや」と言い出し、古いラジカセを囲み皆で聴き入りました。ちょっと場違い感があり、しかもレコードをダビングした音質の悪いものでしたが、ほどなくしてポベーダが「オレエ~ン、オレエ~ン」(オレーと賞賛しながらエ~ン、エンと泣いているハレオ)と泣き出しました。

手練パコ・セペーロの調べにのって歌うティオ・ボリーコの古謡に一様ノックアウト。先ほどまでのカンテ談議はその後続くことはありませんでした。

それほどまでにティオ・ボリーコの歌うソレアは・・・。

とても私の文章力では表現できないので、まだ未聴の方は是非、いや絶対聴いてみてください。
コンパスが身に沁みている方ならツボをつかれまくって昇天できます。
そうでなくともヘレスの古酒に酔いしれてみてください。このほかにも極上のカンテがギッシリ。
次回に続く。

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