喉元過ぎれば火もまた涼し

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「喉元過ぎれば火もまた涼し」。

帰国すればあの騒動も夢の如く感じる。

昨年の夏以来放っておいたヘレスの家の扉を開けると、鼻をつんざく異常なカビ臭。

浸水被害を受け、家中カビだらけだった。

昨年日本でも大きくニュースになった、10月バレンシアを襲った甚大な水害。ヘレスにもその影響はあった。

最上階に住むご近所さんに「あの時はさぞかしお宅も大変だったでしょう」と労ったところ「いやいや、ここら辺は大雨降ったけど水害の影響は何もなかったよ。あなたの家の庭も気にして見ていたけど、大丈夫だった」と。

まさかと思い、家の惨状を見てもらったら「そう言えば2階の家が食洗機のコードが切れて家中水没したから、きっとそのせいだよ」と。

そこで2階の住民を訪ねると人気が全くない。

やっと週末に帰って来たところを捕まえた。

聞けば平日はセビージャにいて週末だけヘレスに帰ってくる夫婦だった。

その事件の時は家を開けたら20cmほどの水が家中に溜まっていて、きっと1階の家にも浸水しているはずだ、と心配して訪ねても誰もいなかったから知るよしもなかったと。

幸いとても親切な方たちで、すぐに保険会社に連絡してくれた。

ただそこから全く保険会社から音沙汰なし。

それでもはじめのうちは掃除すれば何とかなるさ、なんて呑気に構えて、カビ取りに励んでいたが、家具をどかせば新たな大量のカビ、押し入れの上を見れば謎のキノコ発見。服も真っ黒、家具は朽ち果てていた。

1週間経っても連絡がないので、スーパーウーマン、カニサレス夫人、小倉真理子さん(救済の女神、否、鬼神)にSOS 。

彼女の猛抗議のお陰でやっと保険会社の鑑定士が来てくれた。

ここまでで2週間。残り僅かの滞在は23年間愛用し続けた服と家具との別れ。

服は年に数回しか着ないので、ほぼ23年前のままで、骨董品を着用しているようで楽しかったのに。

ソファを捨てるため持ち上げたら、大量の水が流れ出したのには、もはや驚きを超えて大爆笑。

「フラメンコ曽根崎心中」で2004年フェスティバル・デ・ヘレス初出演時に使用した大きな縁台を記念品として家具として使っていたが、たくさんの思い出と共に別れを告げた。その辛さと言ったら。

「ごめんね、ありがとう」と何度も心の中で反芻した。

まだまだどこまで保証してくれるかわからない中での帰国。

散々な滞在になってしまったが、工藤朋子リサイタルと瀬崎慶太(途中カビにやられぶっ倒れながらも、手助けしてくれた。ありがとう!)のコンクールの為のリハーサルをAntonio Malena Hijoと過ごした時間が、束の間の救いを与えてくれた。

フラメンコに助けられた。

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