心斎橋の路地裏。
二日酔いの千鳥足が古びた佇まいに引き込まれた。
「おすすめはなんですか」
「全部」
ご高齢のお母さんが即答。
厨房に目をやると老俳優のごとき御店主。
娘さんらしき女性が気持ちよく立ち働く、昭和で時間が止まっている店。
色褪せた品書きに混じる可愛らしい文字は娘さんのものか。
豊富な品数に迷える子羊の横で入店するや否や注文する常連さんたち。
「肉吸、肉野菜炒め、ご飯」
うどん、蕎麦じゃない。
「カレーうどんとご飯」
炭水化物のダブルパンチ。
達人たちの即断にいよいよたじろぐ。
熟考の末、大好物の「かすうどん」に落ち着き、隣の畑をチラ見しつつ心待ち。
そこに現れたのはなんと、あの揚げたホルモンが関西出汁の汁に泳ぐそれではなかった。
大根と人参、豚肉が具。汁は白濁。
酒粕の汁。
酒浸りの身体に酒粕か、と萎えたが、ひと口ふた口とすするうちに、滋味深き味わいにすっかり虜。
逸品に出会えた喜びに、腹がもう一品と呟いた。
ここは迷わず「肉吸」。
硬めの部位がよく煮てあり、程よい歯応え。
汁は待ってましたの関西出汁。ほのかな甘味。
癒されるとはこのこと。
また寄らせてください。
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