ヘレスの家の隣、20年以上空き家でほぼ廃墟と化している。
その空き地が林、いや森、いやジャングルになっちゃって、うちの庭まで浸食して来た。
この落ち葉が排水口を詰まらせる。
以前はヘレスに来るたびに切っていたが、3年も放っておいたジャングルはもはや手に負えない。
管理人に相談したら、自分の庭の問題は市役所に相談に行けと。
苦情を役所に言いに行くなんて、日本にいてさえやったことないのに、それをスペインでやることになるとは。
朝一番で乗り込んだが長蛇の列。小1時間ほど待たされ拙いスペイン語で陳情した。
一生懸命話しているつもりが、何故か笑われてる。
フラメンコ人間同士だと訛ってるの普通だが、一般の人からすると日本人がヘレス訛りで話しているのがどうやら可笑しいみたい。
外人が「ホンマにエライこっちゃで」と言ってるのと同じ。
向こうも向こうで役所の人なのに冗談混じりで話してくる。
そんな様子を周りの人も面白がって割り込んで来て問題解決自慢話をしてくる始末。
こんな長閑なヘレスが大好きなのだが、今はそれどころではない。
結局市役所じゃなくて違う関連施設に行けと。
向かった先でも全く同じ状況。
暇なおっさんのお節介話しを散々聞かされ、挙句の果てにこの問題は自分で処理するしかないと。
朝一で動き始めてもう昼過ぎ。
また1年賞味期限が過ぎた鯖缶食べて腹ごしらえして、仕方なく取り掛かった。
糸のこの大きいのしかなかったので、1日目は1m四方くらいしか切れなかった。
次の日大きいノコギリをゲットして、いよいよ腰を据えてジャングル開拓。
得体の知れない虫たちがウジャウジャ。気持ち悪いったらない。
木々も一筋縄では行かず、幹を切っても枝が引っかかって倒れもしないし、運べない。
だからまず枝を全部切って片付けて、やっと幹を切る。途方もない。
綱引き状態で倒れた木を引っ張っていたら突然折れたので、3メート吹っ飛んで思いっきり尻もちついた。しかも廃墟だから瓦礫の上。
お尻が2倍に腫れて作業中断。
寝返り打つのもできず睡眠不足で翌日続行。
気持ち悪かった虫たちもなんだか可愛くなってくる。
熊ん蜂にまとわりつかれ逃げ回っていたが、刺す気配なし。どうやら惚れられたみたい(頭おかしくなってきた)。
それにしても木の根っこの深さ、幹の硬さ、枝の柔軟性。自然が生み出した完璧なバランスに感動。
もし木が踊ったら世界一のダンサーだ。
3日もすると、はじめのうちは力任せで切っていたが、最後の方は腰を入れて力を抜いて、独自の呼吸法だけで切れた。
酔拳の師匠みたいな動き。
結局家一軒建つくらいの広さを開拓。
木こりの達人になった。
だけど帰って来たら何の役にも立たん。